俺はダメだ
三次元の女と会話すると震えが走る。震える以外に何もできない。いや、むしろ何もできないことからくる精神の狼狽が震えとしてあらわれるのだ。そしてますますなにもできなくなる。酒が入っていてもダメだった。べつに会話の内容とか普通の飲み屋会話なのにダメだ。ここまでリアクションパターンが身体記憶から失われているとはさしもの俺様も想定していなかった。もう俺は10mいじょう離れたところから眺めるくらいしか、三次元の女に対してとれるアクションがないのか。いまの俺はもはや、電車で隣に座ったひとが物を落としても、拾おうとした手が震えて何もできないのかもしれぬ。この有様ではもし隣に美人声優が引っ越してきたとしても、ゴミ捨て場ですれちがっても喉がフリーズして挨拶すらできないのかもしれぬ。おお、わたしはどうすればいい。どうもしないのがいいか。そうか。現世は夢か。