金魚運動で全て解決します。保存会

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君達は数学が好きすぎる

id:tebukuro:20041005とかでモンティ・ホール問題が流行っているようなので


3つの箱A,B,Cがあって、どれかひとつが当たり。登場人物は出題者(モンティ)と解答者。出題者はもちろんどの箱が当たりかあらかじめ分かっている。解答者はどの箱が当たりかを当てる。まず何のヒントもなく推測してどれかひとつの箱を選ぶ。このとき、偶然その推測が当たる確率は1/3。出題者はそれを見て、解答者が選んでいないハズレの箱をひとつ開ける。さて残る箱は2つになった。このとき、解答者は選択をやりなおすことができる。いま選んでいる箱がいいか?それとももう一方の箱に乗り換えた方がいいか?当たる確率が高いのはどちらか、あるいは2つは等確率なのか。というのが問題。
この問題はむかし俺もどっかで聞いたんだけど、もちろん正解は乗り換えた方が得で、2/3の確率で当てることができます。だけどそれを導くのにはけっこう失敗しやすい。
もっとも単純な説明をすれば、解答者が最初に選んだ箱が当たりである確率は1/3なのだから、それ以外が当たりである確率は2/3、そのことは出題者がハズレをひとつ開けた後でも変わらない、だから乗り換えて当たる確率は2/3である、ということになるんだけどこれじゃ何も言ってないのと同じじゃんとかつっこまれて困る。
これの肝は、出題者が開ける箱の選択肢の数が場合によって変化するところなんだよね。どうせ箱は3つしかないので、全パターンを確率付きで洗い出してしまう力技が楽だろう。ではいってみよう。
§1. まず、当たりの箱と、解答者が最初に選ぶ箱との組み合わせを列挙する。これらは3×3=9通りあり、それぞれ等確率で生起し、かつ独立な事象であるため、すべての場合が1/9の確率で生起する。(当たりの箱,最初に選ぶ箱)として列挙してみるよ。

  • a: (A,A)(B,B)(C,C)
  • b: (A,B)(A,C)(B,A)(B,C)(C,A)(C,B)

さて、等確率だといったのにaとbの2列に分けました。これはなぜか。aとbではこのあと、出題者が開ける箱の選択肢数が変わるからです。では、その出題者の開ける箱についてみてみましょう。
§2a. 解答者が最初に当たりを引いた場合
このとき、当たり=選ばれ、なので2つのハズレ箱はどちらも解答者に選ばれていません。したがって出題者は開ける箱をこの2つから任意に選べます。まあ特に偏らせる理由はないですからそれぞれが開けられる確率は等しいとしましょう。では(当たり,最初に選ぶ箱,出題者が開ける箱)の組み合わせを列挙してみましょう。

  • (A,A,B)(A,A,C)
  • (B,B,A)(B,B,C)
  • (C,C,A)(C,C,B)

このように、§1aで出した3通りのそれぞれについて、出題者の開ける箱のパターンが2通りありますね。上記の通り開けられる確率を等しいと思えば、ここで挙げたうちひとつの(当たり,最初,出題者)の組み合わせが成立する確率は1/9×1/2=1/18になります。
§2b. 解答者が最初にハズレを引いた場合
このときは§2aと異なり、出題者が開ける箱に選択の余地がありません。さっきと同じように列挙すると次のようになります。

  • (A,B,C)
  • (A,C,B)
  • (B,A,C)
  • (B,C,A)
  • (C,A,B)
  • (C,B,A)

このように、§1bの6通りのそれぞれについて、出題者の開けられる箱は1つのみです。よって、ここで挙げた6通りのうちどれかの組み合わせが成立する確率は1/9×1=1/9になります。
§3. 実は§2aは「解答者が乗り換えたときハズレる場合」と一致します。§2bは「解答者が乗り換えたとき当たる場合」と一致します。前者の確率は(1/18)×6=1/3です。後者の確率は(1/9)×6=2/3です。よって、乗り換えたとき当たる確率は2/3であり、乗り換えた方がよく当たります。
…まだ騙されてると思いますか?