金魚運動で全て解決します。保存会

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男が暖色系の服を選ぶ道はあらかじめ閉ざされていて、再びそれを開くには何らかのイニシエーションが要るのではないか?

今回の調査で興味深く感じたのは、お洒落な男性オタクだろうがそうでなかろうが、彼らの服装で殆ど一貫してみられる「暖色系の入った服飾の欠如」である。具体的には、明るいグリーン、黄色、ピンク、オレンジ、といったカラーの入った服飾の男性が非常に少ない。

2007夏コミ三日目行列にみる、男性オタクの表情と服飾の特徴に関して - シロクマの屑籠

オタクは服に金も時間も注意も払わないとか服装親任せの小学生時代からファッションセンスが変化しないとか、そういう全体的な話への反応は2004年にしたことがあるのだが、今年は色相の話にかぎって別の反応をしてみたいとか思った。
なぜオタクはそこそこのお洒落経験値があったとしても暖色系*1を選択しないのか?というのが引用元で提示されている疑問だ。それに対し俺は逆に、そもそも男は如何にして暖色系の服装を選択するきっかけを得るのだろうか?という疑問を提示する。


話は小学生時代に遡る。この時期に多くの男子は暖色系の服に対する無意識的な抵抗を植えつけられるのではないか。
小学校は制服がないほうが一般的だから、小学校の頃には通学時の服装に選択の自由があるはずだが、なぜだか男は青・黒系統・女は赤系統、というジェンダーと直結した色選択の不文律が存在していたように思う。しかもそれは制限としては男の側にのみはたらいていて、女子が青・黒系統を着てても別に何も言われなかったが、男子が暖色系、とくにピンクを着ているとほぼ確実にいじめ・からかいの対象になっていた。それを力でねじふせられる者を除き、小学生男子には暖色系を着る権利がなかったのだ、と当時の俺は肌で感じていた。
こうして小学生のうちに、自分の服装の選択肢から暖色系が削除され、暖色系を着ている自分をイメージする能力が忘れられていく。思えば戦隊物においても当時はピンクは女メンバー、赤はフロントを張れるリーダーで固定。普通の男子は黒か青しか選べなかったのだ。黄色?「カレーは飲み物」なデヴ専用でしょ?


中学以降はオタクに限らず、日本の男子の多くが制服としてモノクロまたは寒色系の服装の着用を強制される。学ランやブレザーに限らず体操服やジャージに至るまで、ほとんど黒・灰・白か青・紺系のカラーリングに固定。せいぜい暖色系でいうと茶色かあずき色の系統が見られるくらいか。逆に私服についてはもう前述のような不文律から解放されてよさそうなものだが、そもそも小学生のうちに暖色系を着用する自分の姿が想像できないように洗脳されている。さらには「赤いシャツ着るやつは不良」みたいな別方面からの先入観に支配されているかもしれない。
だから、なにか別のきっかけ、明示的なイニシエーションがない限り、暖色系を自発的に選ぶことができるようにはならないのではないか。その「別のきっかけ」というのはたぶん「色気づき」に始まる新たな人間関係構築になるのだろうが、そのきっかけを得られる男子、さらにそれを生かして「暖色系の成功体験」を得られる男子ともなれば、オタクでなくとも果たしていかほどいるものだろうか。


ことほどさように、高校以前においては男にとって暖色系の服を着る機会が少ない、というより暖色系を制限される局面が多い。暖色系へのチャレンジの切符を得られ、それに見事成功できるのは一部の層だけだろうと思う。そして高校を出てから就職するまでの間にいくらかの男は「色気づき」の再チャレンジに成功するかもしれないが、その期間を過ぎて就職し出勤日をスーツで過ごすようになってしまったらまた暖色系への門は狭く閉じられる。ショービジネスかお水系でもないかぎりスーツやブレザーの色はやはりモノクロか寒色系ばかりだから(暖色系はブラウンくらいか)。
そんなわけで、コミケに来るオタクともなれば、そもそも暖色系に挑戦するきっかけを得ることすらあったかどうか怪しいのではないか?というのが俺の印象だ。せいぜい、ぐうぜん服屋で選んで買ってみて気に入った、というくらいのパターンしか思い浮かばない。


とはいえ俺の知っている小学生時代というのは20年前の話で、今の小学生の服装事情はわからない。じぇんだーふりーとやらが浸透していればピンク筆頭にパステルカラーな男子も普通に(いじめられずに)居られるかもしれなくて、そうであれば俺の想像の前提はぜんぶひっくりかえるかもしれない。まあそれ以前に論理展開とか破綻してんだけど。
でも自分の高校以前を思い出してみるにつけ、暖色系の服を着るというのは封印されたかのごとくまったく想像に上らなくって、大学のある時期になってやっと「そういう選択肢もあったのか」って感じで目に入るようになったというのが実体験としてあったので、そういや何でだろうと思い出してみる意味も込めてちょっと書いてみたかったのだった。

*1:実際のところ、暖色系、というよりはパステル系の方が実感に合う気もする。色相よりは彩度・明度の方が重要なパラメータではないだろうか。コミケ(3日目)や秋葉原を眺めている限り、寒色系でも蛍光的な空色を着てる人はあまり見ないし、暖色系でもくすんだブラウンやカーキに近いあたりの色はそれなりに好まれているように思う。